ニュースの現場「高齢者姉妹が手をつないで列車に飛び込み」
2017年4月25日、小田急線の柿生駅で姉妹とみられる2人の高齢者が手をつないで飛び込み死亡したというニュースが報じられた。
なぜ、2人は飛び込み自殺をしてしまったのか。
このニュースは衝撃と共に大きく報じられ、「高齢姉妹が手をつないで自殺」というスートリー性を喚起しやすさからか、インターネット上でも話題になった。
私もそのうちの1人で、なぜ、自殺したのか取材を始めた。
◆事件の概要
NHKは警察への取材の情報として、以下のように報じている。
「川崎市の小田急線の駅のホームから転落して死亡した女性2人は、90代と70代の高齢の姉妹とみられ、ホームのベンチに20分ほど座っていたあと、電車が駅を通過する直前に手をつないでホームの下に転落していたことが、警察への取材でわかりました。(略)また、2人は90代と70代の姉妹とみられ、防犯カメラの映像などから、ホームのベンチに20分ほど座っていたあと、電車が駅を通過する直前に、手をつないでほぼ同時にホームの下に転落していたことが警察への取材でわかりました」
また、2人の身元は明らかにされておらず、共同通信や神奈川新聞の報道では、70代の女性は、77歳の町田市に住む職業不詳の女性ということだ。
◆高齢者の自殺者数
それと、現在の日本での自殺をめぐる状況について簡単にまとめておく。
現在、2016年度の自殺対策白書によれば、日本での全体の自殺者数は2万4,025人と4年連続で3万人を下回っていて、60歳以上の自殺者数は9,883人(前年より減少)で、60~69歳(3,973人)、70~79歳(3,451人)、80歳以上(2,459人。前年より増加)となっている。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-06.pdf
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/zenbun/s1_2_6.html
全体の自殺者数と比べてみると、高齢者の割合が高いことは明らかだ。
ただ、現在の60代はかなり元気な方も多いので、60代と80代以上をまとめて高齢者と括るのは若干、強引な面は否めない。
◆柿生駅に降り立って
小田急小田原線の柿生駅は、神奈川県川崎市にあり、北上すれば多摩川を挟んで東京都の府中市や調布市で都内も近い。ちなみに柿生は「かきお」と読み、名前の由来は柿の名産地だった柿生村からとったとのことである。
ニュースが報じられてから1週間の5月2日火曜日夕方、大型連休の真っ只中、柿生駅に向かった。駅を降りると、すぐに木製のベンチがホームにいくつか並んでいた。このベンチから立ち上がり、高齢の姉妹2人が線路に飛び込んだと思うと、やりきれない思いが募ってくる。
まずは、柿生駅の駅員に当時の詳細を聞こうかと考えたが、「詳細は話せず、広報部を通してほしい」とのことだった。
駅の出入り口は北口と南口しかなく、南口を降りるとすぐに和菓子屋「大平屋」が目についた。ショーケースに時宜的な柏餅や、大福など和菓子のほかに、おにぎりなどが並んでいる。当日、店に立っていた若い店主に話を聞いた。
「午後2時半ごろ、遅めの昼食をとっていると警笛が長いなと思い、外に出てみると人だかりができていた。、外に「人身事故」の看板が立っていました。その後、フジテレビ、NHKなどのテレビ局が取材に来て、報道だと思われるヘリコプターも飛んでいた」
さらに、店主は「年に一度ぐらいは飛び込みがあるのだが、今回は2人でしかも手をつないでということだったので注目されたのかも」と話す。この店主は、当日のNHKの映像にも映っていたそうだ。
お礼を言って、その場を後にした。続いて、この和菓子屋対面には不動産屋と写真屋があったので、当日の話を聞いてみたが、特にめぼしい話は聞けなかった。その先を抜けるとファミリーマート、タクシー乗り場などがあり、居酒屋などが数店舗、点在している。近くの交番へと向かったがパトロール中で、しばらく待ったが帰ってこなかった。
最寄りの警察署は、麻生署で、ここにも問い合わせたが、「報道されている以上のことはこちらもわからない」とそっけない返事だけが帰ってきた。
いくつかの商店などで話しを聞いたが、「時々、飛び込み自殺が起きるので、またか程度」といったような答えばかりだった。とりえず、きょうは現場を見たかっただけなので、駅の周りをさらに取材した。
77歳と90代の姉妹。77歳の女性は町田市の在住で、駅からもそう遠くはない。インターネット上には、町田市から「77歳の女性の捜索願い」が4月初めから出ている。同一人物の可能性はあるのだろうか。連休後に確かめてみたいと思う。
しばらく歩くと、近くに大型スーパーのマルエツがある。もしかしたら、立ち寄った可能性もあるかなと思い、足を運んでみると、店内にはお弁当やパンが売っており、イートインのスペースがある。そこには、仲良く話している高齢者の女性2人、さらに一人の高齢者男性がじっと座っている。もしかしたら、同じようにここに座って話していたのかもしれない。どこに行く当てもなくさまよう、文字通り、徘徊して、柿生駅にたどり着いたのだろうか・・・。
もちろん、まだ何も事実はわかっていない。単に柿生駅に下車して線路に飛び込んだのかもしれない。
取材は続けるので、続報があれば報告したい。(立山陽)