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ひとりでてくてくと

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★★★★ 書評「ポピュリズムと視聴率」 水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)  岩崎達也『日本テレビの「1秒戦略」』 (小学館新書)

水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書

 

ポピュリズムと視聴率―。

日本では批判的なトーンでしかほぼ使われない「ポピュリズム」だが、
本書ではポピュリズムの功罪の「功」の部分に光を当てている。

比較政治学者らしく、ポピュリズムの成り立ちや起源、
現在のEU諸国のポピュリズム政党、トランプ大統領などを引き合いに、
ポピュリズムの功罪を分析する。

ポピュリズムは新聞などメディアでは「大衆迎合主義」と訳されるが、
広辞苑で調べると、「一般大衆の考え方、感情、要求を代弁しているという
政治上の主張・運動」と民主主義との錯覚を覚える。

本書では、「ポピュリズム」を「少数派支配を崩し、デモクラシーの実質を支える
解放運動として出現した」としていて、下から後押しする政治改革だという。

また、ポピュリズムの定義として、①幅広く国民に直接訴える政治スタイル
②既成政治やエリートを批判する政治運動―としている。

ますます、「ポピュリズム」が民主政治と錯覚してしまうが、もちろん、危険性も指摘する。ポピュリストには一貫した思想はなく、あくまで大衆の望む方を向いているため、政策が180度変わることの危険性もあるという。

また、ポピュリストは、訴え方も巧妙で、「既成政治」「エリート」というのは
「特権階級」のことを指し、欧州で問題になっている難民・移民が
その国の「福祉」に与ることが「特権」に当たるとして批判する。

ポピュリズムの政治家や政党は、民主主義の「落し子」として、
その政策に耳を傾けることにより、現代社会の問題がさらにあらわになる。

「あいつはポピュリズムだ」と一言で片づけるのではなく、現代の政治を見る眼を冷静にさせてくれる一冊だ。

一方、同時期に出版された、岩崎達也日本テレビの「1秒戦略」』。

こちらは、フジテレビの視聴率を追い抜くまでの軌跡を、
広告代理店出身の日本テレビ元社員の著者が描く。

語り口も軽妙で非常に読みやすく、テレビの内実が分かり興味深い。

ここで描かれているは、フジテレビのCMの位置や時間まで解剖して、
視聴率1位になるには何が必要なのか、日本テレビの若手社員らがひたすら分析する姿だ。

本書によれば、日本テレビは、「視聴者至上主義」を掲げ、
視聴者が何を求めているのか、ひたすらに追い求めているという。

まさに、「ポピュリズム」的手法である。

しかし、この2冊を通して出る疑問は、大衆、民衆、視聴者とはいったい誰なのか。
大衆という一人の人間は存在しない。

その不特定多数をがっちりととらえる「政治」や「メディア」の恐ろしさを垣間見れる2冊である。(2017年1月読了)

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