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★★★★ アニメ評「演出のうまさに脱帽した」 機動戦士ガンダム「鉄血のオルフェンズ」第一シーズン(サンライズ)

映画を除けば、TVシリーズのアニメを見たのは、
エヴァンゲリオン」「まどか☆マギカ」以来。

ガンダムはファーストから続く宇宙世紀シリーズはほぼ見たが、
最後に見たのは、「ガンダムW」だった。

そんな中で観た「鉄血のオルフェンズ」には衝撃を受けた。

というより、現代のアニメの演出手法にである。
オープニング曲やエンディングテーマ、サブタイトルの出し方など、
1回の放送およそ25分を一体感ある映画のように演出する。

さらに、スピード感と重厚感に圧倒される。
その演出に成功している1つの理由は、ガンダムで一般的に使われる
ビーム兵器を使わず、金属の武器でモビルスーツ同士が戦うからであろう。

金属がぶつかり合う音は激しく、その音の激しさがスピード感まで演出する。

設定は複雑だが、ストーリーは割とシンプルで、
火星の経済的独立を目指すジャンヌダルクのような若き革命家の女性を
地球まで送り届ける少年団たちの姿を描く。

少年たちが主人公というのはガンダムでは定番だが、
その少年たちが、ストリートチルドレンや、ISの少年兵を思わせ、
彼らが民兵組織を立ち上げ戦う姿は、現代の戦争をも思い起こさせる。

また、少年団の一部で同性愛を思わせるシーンがあるが、歴史学者の清水克行さんが
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』(集英社インターナショナル)で、
「同性愛は戦国の文化なんですよね」と語るように、そのような面もうまく描く。

少年団はあくまで民兵の軍隊組織に近かいのだが、
少年たちをまっすぐで清廉な存在として描く一方で、
大人側には裏切りや嫉妬、妬みが渦巻くなど対比的に描いている。

だから、少年団の中でのいじめやレイプなどはさすがにない。
戦争を扱ったハードボイルドなリアル作品ではあるが、
そこは一応は少年向けのアニメ所以か。

ただ、暴対法がこれだけ進む中で、仲間組織と盃を交わすなど、
日本の任侠組織を肯定するかのようなストーリーは中々、興味深い。

作品の中で仲間はどんどん死ぬし、戦争の残酷さや人を殺すことの意味、人間の在り方、人を葬ることの意味を考えさせるなど、ガンダムらしい人間ドラマは残っている。

ちなみに、好きなシーンは、字の読めないガンダムパイロット・三日月に、
ヒロインのクーデリアが「文字」を教えるところだ。(2017年1月)

https://www.amazon.co.jp/第1話-鉄と血と/dp/B01M0E961S/